Episode #24ではイギリスの国名について正しい意味について解説をしましたが、歴史的、地理的、および宗教的に非常に複雑な地域であることが分りました。
スポーツの世界は歴史的、地域的に複雑な国 イギリス!
ところでイングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの4ヶ国とアイルランドを含めた5ヶ国がスポーツの世界ではどのような枠組みになっているのでしょうか?
サッカーのワールドカップ、オリンピック、ラグビーのワールドカップを例にとって説明します。
サッカーのワールドカップ出場方法は?
ご存じかも知れませんが、日本や北米を除いたそれ以外の地域ではサッカーは「フットボール」と呼ばれています。
そのフットボールの世界の大元締めである国際フットボール協会「Fédération Internationale de Football Association:FIFA」は参加国の基本ルールとして、“1ヶ国、1代表”のルールを定めています。
ところがワールドカップの欧州予選には英国からはイングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドがそれぞれ参加していて、明らかにFIFAの基本ルール、“1ヶ国、1代表”に反しています。
この理由は、FIFAが設立された1904年には既にイングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドのそれぞれの国のフットボール協会が別々に設立されていました。そのためFIFAは特別なルールを作り4協会それぞれにワールドカップへの参加を認めました。
因みに、世界で最初に創設された最古のフットボール協会はイングランド・フットボール協会で、正式名は「The Football Association:The FA」と呼ばれています。
サッカー発祥国の誇りを表しています。
オリンピックの参加はどうなの?
オリンピックでは国際オリンピック委員会「International Olympic Committee: IOC」が、“各国のオリンピック委員会毎の出場”と決めており、またイギリスは4つの王国全体でオリンピック委員会を作っているため、オリンピック出場の方法はサッカーのワールドカップと異なります。
2021年に開催された東京オリンピックでは、入場行進時のプラカードに使われた国名は「GB:Great Britain」でした。なぜUKの名前でないのか不思議に感じます。
これはイギリスのオリンピック委員会 「British Olympic Association: BOA」が1999年以降に国名をGBとして正式に登録しているからです。
しかし前回のEpisodeでも紹介しましたが、 GBの意味するのはグレートブリテン島の中に位置するイングランド、スコットランド、ウェールズの3つの大国のことを意味しており、北アイルランドが入っていないとの批判が国内でもありましたが、BOAはこの件については完全に無視し続けています。
北アイルランドの人達はオリンピック自体にあまり興味がないのかもしれませんが、完全に無視されているようでちょっと可哀そうですね。
ラグビーのワールドカップは?
ラグビーの世界でもサッカーと同じ理由で、イングランド、スコットランド、ウェールズの3つの王国はそれぞれの国を代表して参加します。
しかし北アイルランドはサッカーとは事情が異なります。
2019年に日本で開催されたラグビーワールドカップでは日本代表は悲願のベスト8を達成しました。その時日本はアイルランド代表と予選リーグで戦い、日本が19-12で勝ちました。
そのアイルランド代表はアイルランド共和国と北アイルランドの2ヶ国の合同チームで構成されています。
これはアイルランドラクビー協会がアイルランドの南北分裂前から存在していたことによります。そのためラクビーではアイルランドは1つの代表チームとして国際試合に参戦します。
しかし、北アイルランド人口の3分の2に達するプロテスタント系住民と少数派のカトリック系住民との宗教的対立や差別問題から1960年代後半から生じた「北アイルランド紛争」を契機に、1995年より試合前の国歌斉唱ではラグビーナショナルチーム用に新たに作曲されたチームの歌「Ireland’s Call」を全員で斉唱しています。
(アイルランド ラグビーアンセム:一部抜粋)
アイルランド アイルランド
共に堂々と立ち向かえ
肩と肩を組み合って
アイルランドの呼び声に応えるのだ
ラグビーではアイルランド人としての誇りを持って一緒に戦うという素晴らしい歌です。
ラグビーは試合が終わればお互いノーサイド、ラグビー以外でもラグビー精神を見習いノーサイドとなれば良いですね。
イギリスはスポーツの世界でも大変複雑な国です。
<今日のビジネスで使えることわざ>
“一石二鳥“
「Kill two birds with one stone.」
JT